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谷口 忍
DOCALLY EXPERT ─ M&A・事業承継

谷口 忍

たにぐち しのぶ|W BRIDGE ADVISORY(ダブルブリッジアドバイザリー)

仲介する側であり、買って経営している側でもある

売って終わりではなく、
買った先生が続くところまで。

美容クリニックのM&A・事業承継を手がけながら、自社でも美容クリニックを4院運営。「自分が買ったとして、やっていけるか」という買い手の目線で、売り手を見ています。

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PROFILE

「買った側」を知っているM&Aアドバイザー

M&Aの仲介会社は数多くありますが、自分でクリニックを買い、経営している仲介者は多くありません。谷口さんは、美容クリニックのM&A・事業承継を手がけながら、自社でも美容クリニックを4院運営しています。

この立ち位置は、案件の見方に直接あらわれます。「自分が買ったとして、このクリニックをやっていけそうか」。あるいは「自分には力はないけれど、あそこなら良くできるのではないか」。常に買い手側の視点で売り手を見るのが谷口さんのスタンスです。

だからこそ、引き受ける案件を選びます。一般的な案件であれば「大手さんで進めたほうがいい」と伝え、そもそも受けません。自社として自信が持てるもの、買い手とのシナジーが具体的に見えるものだけを扱い、進める場合は2〜3ヶ月で決済までを着地させます。

CAREER

経歴

コンサルティング
人の悩みを聞き、解決する仕事から
キャリアの出発点はコンサルティングの仕事。「人の悩みを聞くことが仕事で、ゴールはその悩みを解決すること」という仕事の型は、いまのM&Aの進め方にもそのまま残っています。
シンガポール
士業の海外進出支援
シンガポールへ移住し、士業の先生方の海外進出を支援。この時期に、医師向けマーケティングを手がける広告会社の社長から相談を受けたことが、医療業界との接点になりました。
2013年ごろ
AGAクリニックの経営に参画
帰国後、その社長から「自分たちでクリニックを運営する。経営に参加しませんか」と誘われ、マーケティングを担当。問い合わせ対応、カウンセラーの配置、カウンセリング設計、価格設定、広告費の設計までを担う。八重洲で1院目を開き、1年経たずに秋葉原へ2院目と順調に拡大。
脱毛クリニックの立ち上げ
アフィリエイト広告から見えたマーケット
士業向けの広告事業で扱っていたアフィリエイト広告のうち、脱毛クリニックの案件が大きなシェアを占めていた。「そこにマーケットがある」と判断して脱毛クリニックを立ち上げる。後に、アートメイク部門も立ち上げ。
2021年〜現在
東京・大阪で、アートメイク主体の美容皮膚科とメンズ美容を運営
現在は、東京(新宿・表参道)と大阪でアートメイク主体の美容皮膚科を、新橋でメンズ美容を運営しています。

クリニックM&Aの原点

現在手がけているクリニックM&Aの始まりは、自ら事業譲渡を提案し、成立させたことでした。

脱毛市場の縮小で経営が厳しくなるなか、順調だったアートメイク部門を切り出す事業譲渡を提案。譲受先を投資家のなかから探し、成立させた。これが谷口さんにとってクリニックM&Aの始まりでした。

※本セクションは 2026年9月1日の取材にもとづき、ドカリー編集部が構成したものです。

STRENGTHS

相談できること

売り時の見極め

谷口さんのもとに来る相談の90%以上は、経営がうまくいっていない段階です。そのうえで、明確な基準を持っています。「1期赤字になり、その原因がはっきり分かっていない。あるいは分かっているのに手をつけていない」——この状態なら、M&Aという選択肢を模索し始めたほうがいい、と。

よくあるのは、事務長が辞めてしまった、流行りが終わった、供給が増えて価格競争に入った、というケース。とくに広告面では、運営する側は「お客さんが減った」と感じますが、実際には「広告単価が上がっている」ことが多い。マーケティングを見ている側は、この変化に早く気づけます。

価格の考え方と、借入・役務という関門

黒字か赤字かで、評価の考え方は大きく変わります。赤字の場合の目安は、「いま新規で開業した場合にかかる初期コスト」と「既存を割安で買えるか」の比較です。

そして実際に進むかどうかを分けるのが、借入と役務。売り手は「売ってスッキリしたい」ため、借入をそのまま引き継いでほしいというのがほぼ前提になります。買い手が出せる金額と借入額の折り合いがつくかどうかで、話の進み方が変わります。

買ったあとの立て直し(PMI)

谷口さんは「売って終わり」の案件を扱いません。買い手が思い描いた形に近づくよう、マーケティングや人材の視点で入ることもあります。

買収後にまず手をつけるのは人材です。事業計画が達成できるオペレーションとマネジメントになっているかは、ほぼ人によって決まる。人材を先に動かし、マーケティングは並行して走らせる、という順番です。

「そのままのメンバーだけだと、状況は変わりにくい。ある程度の新陳代謝はあったほうがいいというのは、M&Aをして思うというより、自分で運営している立場として感じることです」
FOR

こんな方に

美容クリニックの譲渡・売却を検討したい 1期赤字になり、この先をどうするか迷っている 美容クリニックの買収・新規参入を考えている 買収したクリニックの立て直しを相談したい 個人開設と医療法人で、承継の進め方を知りたい

谷口さんは、すべての案件を引き受けるわけではありません。一般的な案件であれば「大手のM&Aアドバイザリーで進めたほうがいい」と正直に伝えます。買い手にとって具体的な魅力が想像できるクリニック、あるいは明らかにシナジーが見えるもの。そうした案件に絞ったうえで、責任を持って進めるスタンスです。

「売って終わり」を望む場合も、買った先が続くところまで見ているぶん、別の選択肢を案内されることがあります。

TRACK RECORD

実績

4
現在運営中の
美容クリニック
4件超
年間のクリニックM&A
2〜3ヶ月
着手から決済までの
標準的な期間

※ 記載の数値は谷口様のご確認にもとづきます(2026年9月時点)。/※ 自社運営の4院は、関連会社による運営です。

PHILOSOPHY

大切にしている考え方

「買った方が成功しないといけない。だから、自分が買ったとしてやっていけるかという目線で見ています」

医療や治療の領域には踏み込みません。そこは医師の世界観であり、谷口さんが扱うのはマーケティングとマネジメントです。むしろ、この2つに関しては「先生がタッチしないほうが、うまくいく可能性が高まる」と考えています。

この仕事のいちばんの難しさとして挙げるのが、期待と現実のギャップを伝えること。「マーケット自体は明らかに伸びていますし、注目度も高い。でも実際にやってみると厳しい、少し変わった業種です」。夢を持ってキラキラした状態で来る新規参入のオーナーに、現実を伝えながら進めなければならない——そこに難しさがある、と語ります。

INTERVIEW

取材こぼれ話 ── 買う側から見た、美容クリニックのM&A

2026年9月の取材から、記事本編に収まりきらなかったお話をご紹介します。

一般企業のM&Aと、同じようにはいかない

一般企業であれば、新規事業を足す、伸びている部分をスケールさせる、買い手とのシナジーを効かせる。やりようはいくらでもあります。ところが美容クリニックは、診療がライン型で枠に限りがあるため、天井がある程度決まってしまう。「画期的なV字回復が、あまりやりにくい業種だと感じています」。

治療の入れ替えや新しい治療の導入はできますが、機器の購入や、それを扱える人の雇用といった初期投資が必要になる。すでにマイナスで回っている状態から、さらに新規投資をするのは難しい場合が多い、といいます。

いま、地方都市が厳しい

大きな流れは変わっていないものの、名古屋・大阪・広島・福岡といった地方の大都市で、経営が芳しくなく売却したいという相談の割合が増えている感覚がある、と谷口さん。東京都内は、場所さえ良ければ売買が成立しやすい状況が続いています。

今年とくに多いのが、「地方で保険診療をやっていて、自費を勧められて作ったけれど、うまくいかない」という相談。見に行くと内装は作ったままで綺麗なのに、開業から半年ほどで立ち行かなくなっている。資金を投下して間もないため売却の希望額が初期投資額に近くなり、買い手とのミスマッチが起きやすいといいます。

スタッフに伝えるか、伏せるか

売却を進めるとき、オーナーのタイプはくっきり二つに分かれるといいます。「もう言ってあるので大丈夫です」と公開して進めたい人と、「絶対にバレないようにして進めたい」という人。

谷口さんとしては、スタッフも状況を分かっていて、現場の実態をヒアリングできる状態のほうがやりやすい。買い手も最終的には「スタッフは残るんですか」を必ず気にするからです。「言いたくない気持ちも分かりますが、伏せたままだと進みにくいのは確かです」。

手続きの知識は「経験した人として」

個人開設と医療法人では、承継の手続きがまるで違います。個人は銀行関係を引き継げない(別物という考え方)のに対し、医療法人は真逆で、基本は引き継ぐ前提。債務超過の有無、返済に滞りがないか、そして保証人の変更が確実に行われるかが論点になります。

不動産についても、オーナーチェンジの際に賃貸借契約をそのまま引き継げるかの事前確認が欠かせません。引き継げない場合は新オーナーで借り換えることになりますが、それは審査次第。「買ったはいいけれど賃貸借を引き継げない、新規でも借りられない」という事態を防ぐのがポイントだといいます。

「手続きの人として分かるというよりは、経験した人として分かる、という感じですね」

自らMS法人の代表として保証人に立ってきた経験があるからこそ、「こんなことがありますよ」と具体的に言える——それが谷口さんの知識の出どころです。

※本コーナーは 2026年9月1日の取材時の会話をもとに、ドカリー編集部が再構成したものです。

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