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TOP経営インタビューハイブリッド・クリニック経営論SPIN-OFF スタッフ座談会【後編】
SERIES|ハイブリッド・クリニック経営論 SPIN-OFF ― 現場座談会

月70万円が月500万円になるまで、
裏側では何が起きていたのか。

後編

導入初期の摩擦を乗り越えた現場(前編)。後編では、新千歳クリニックの自費売上が伸びていく過程を運営と数字の両面から振り返りながら、その成功体験を南多摩クリニックへ「移植」するリアルに迫る。転換点は、機械でも広告でもなかった。

経営インタビュー取材地:南多摩クリニック読了 約10分(後編)

※本記事は、南多摩クリニックのスタッフ3名に個別に実施したインタビューを、読みやすさのため座談会形式に再構成したものです。掲載内容はご本人の確認を経ています。

小林さん
小林 さん
看護師長
関根さん
関根 さん
事務長(新千歳)/南多摩 組織マネジメント担当
住田さん
住田 さん
管理部長(法人)/南多摩 事務長 兼務
PART 04 — GROWTH

転換点は、予約システムだった

― 編集部新千歳クリニックでは、脱毛から始めた自費売上が月3〜4万円から月70万円、いまでは月平均500万円規模まで伸びました(#01 宮井理事長インタビュー参照)。数字の面では、どう見えていましたか。

住田さん
住田(管理部長)

脱毛を始めてから、半年くらいで患者さんが入ってきたな、という感覚がありました。黒字化は1年くらいだったと思います。脱毛機はリースで毎月の支払いがありますが、半年から1年ほどでその月額を売上が超えていった。数字を見ている側からすると、「これは回る」と分かってくるタイミングでした。

― 編集部売上が伸びていく過程で、運営面での一番大きな変化は何でしたか。

関根さん
関根(事務長)

間違いなく、予約システムの導入です。もともと昔ながらのクリニックで、予約は手で管理していました。件数が増え、医療機器が増えていくと、「部屋・人・機械」の3つを同時に管理しなければならなくなる。紙だとどうしてもミスが起きて、ダブルブッキングも発生してしまう。しかも、その予約管理に時間を取られて、本来は施術に充てられる時間が削られていく。これが一番の課題でした。

予約システムを入れて情報を一元化したら、患者さん側のハードルも一気に下がったんです。それまでは「電話をかけないと予約できない」。もともと口コミはあったのに、予約するまでが大変だった。ネットから簡単に予約できるようになったことで、その壁が全部打ち破れた。あとはスタッフ教育が行き届いていれば、件数は勝手に増えていきました。

― 編集部カード決済など、「自費ならでは」の仕組みづくりで苦労した点は。

関根さん
関根(事務長)

正直、「自費ならでは」という捉え方はあまりしていなくて。保険か自費かは、お金の出どころが違うだけ。医療の知識と技術で患者さんの悩みを解決することは同じで、手段が保険か自費かというだけです。ハード面は、必要なら合わせて導入すればいい。手段のレベルの話だと思っています。

ただひとつ言えるのは、自費はどうしても高額になるので、カード決済やQRコード決済は必須条件です。これがないクリニックでは、正直難しいと思います。

「口コミはあった。足りなかったのは、予約への入り口。売上を伸ばした転換点は、機械でも広告でもなく、予約システムだった」

― 関根(事務長)
PART 05 — FINANCE

経理から見た自費のリアル――入金サイクルと、消費税の壁

― 編集部経理・財務の管理という面で、保険と自費はどう違うのでしょうか。

住田さん
住田(管理部長)

まず、お金の入り方がまったく違います。保険はレセプトのお金が2ヶ月後に入り、金額もおおよそ読める。自費は月末締めのカード売上が15日後に入ってくるイメージです。4院を見ていると、クリニック間で資金を動かす場面も多いので、大きな支払いのタイミングを事前に把握して備える、というのが日常です。

仕入れも違います。保険の薬剤は大手の業者に一本化されて引き落としで読めますが、自費は業者も多様で、その都度払いが多く、大きい金額の消耗品も出てくる。読めない支出があるので、口座にある程度お金を残しておく、という管理の仕方になります。

― 編集部自費の収益が増えてきたとき、法人全体の財務はどう変わりましたか。良い面だけではなかったとうかがっています。

住田さん
住田(管理部長)

入ってくるお金が増えたのは、もちろん良い面です。ただ、うちの場合、想定していなかったのが消費税でした。保険診療がメインの間はそこまで大きな負担ではなかったのですが、自費の売上規模や事業の構成など、いくつかの条件が重なって税額の計算の仕方が変わり、負担が大きく増えた時期があったんです。これはすべてのクリニックに当てはまる話ではなく、あくまでうちで起きた一例です。ただ、こういうことが起こり得ると知っているかどうかで、心構えがまったく違ってきます。

売上が伸びた、と喜んでいても、利益がそれに見合っているのか。税負担まで含めて見ると、実際どうなのか。ここは、数字を見ている側でないと気づきにくいところだと思います。

― 編集部「院長の決断だけでは自費導入はうまくいかない」と言われます。経理・管理サイドの支えは、どれほど重要ですか。

住田さん
住田(管理部長)

売上から人件費や薬剤費を引いて、実際にどれだけ残っているのか――そこまで院長が全部把握するのは、現実的に難しいと思うんです。たとえば業務委託で回している事業が、本当にクリニックのお金として残っているのか。売上が増えたことで税負担がどう変わったのか。事業を続けるかどうかの判断には、経理・管理サイドからの視点が必要です。

これから始めるクリニックにまず整備してほしいのは、①どの業者とやり取りしていて、ランニングコストが重いのはどこかを把握すること、②費用対効果が見える形にしておくこと。日々の資金繰りを左右するのは、結局そこですから。

「売上が上がることは良いこと。でも、それに利益が見合っているか、条件によっては税負担がどう変わり得るかまで見ておくと、準備がまったく変わってくる」

― 住田(管理部長)
PART 06 — TRANSPLANT

新千歳から南多摩へ――成功体験は「移植」できるのか

― 編集部新千歳での成功体験を、いま南多摩に持ち込もうとしています。同じようにできそうな点と、難しい点は。

関根さん
関根(事務長)

持ち込めるのは「姿勢」です。なぜやるのか、これをやることでどういう良いことがあるのか――お互いの価値観のレベルで、すり合わせられるところをすり合わせていく。「いいからついてこい」が必要な場面もありますが、寄り添える着地点を探す姿勢を見せること。これは新千歳でも南多摩でも変わらず大事にしています。

難しいのは、そもそも条件が違うことです。建物の構造も、スタッフの年齢もバックグラウンドも違う。「新千歳でやってたからできるでしょ」という持ち込み方をすれば、受け取る側が窮屈に感じるのは当然です。一人ひとりの背景をちゃんと理解した上で、それでもこうやりたいんだ、ということを丁寧に説明する。移植のリアルは、そこに尽きると思います。

― 編集部南多摩クリニックは、いま導入のどの段階に。

関根さん
関根(事務長)

本当に、初期の初期です。だからこそ今は、全員の教育よりも「やりたい」と言ってくれているスタッフの支援を最優先にしています。同時に、他のスタッフには「仲間がやりたいと言っていることをサポートしようよ」「誰かを応援できるのは素敵なことだよね」という話をする。順番があるんです。

住田さん
住田(管理部長)

数字の面では、南多摩は保険メインの設備・間取りなので、「どの施術なら効率が良いか」「この場所で物理的にできるか」という視点が要ります。固定の患者さんはついてきていますが、クリニックの売上の一翼を担うのはもう少し先。焦らず、今ある場所と人でできることから、と見ています。

― 編集部現場の手応えとしては、いかがですか。

小林さん
小林(看護師長)

手応えはすごくあります。院内にポスターを貼って、Instagramにも載せてもらっていて、「インスタ見ました」という電話の問い合わせが来る。保険で通っている患者さんが「これにすごく興味があるんだけど」と声をかけてくださって、そのままカウンセリングして当日施術になるケースも珍しくありません。注射や採血をしながら「実はこういう悩みがあるのよね」と話してくださる方もいて――これ、保険だけのクリニックだったら絶対に出てこない会話なんですよ。

うちは1日に150人、200人と来院がある。その中の1人でも2人でも興味を持ってくださればいい、というところからのスタートですから。かかりつけとしての信頼感があって、通いやすくて、広告費をかけなくても患者さんがいてくださる。これが保険クリニックで美容を始める最大の強みだと、日々実感しています。

嬉しかったのは、80歳近いご高齢の方でも興味を示してくださること。「やりたかったけど他のクリニックには行けなかった。通っているここでできるなら本当に嬉しい」と言っていただけたとき、始めてよかったなと思いました。

「注射をしながら『実はこういう悩みがあるのよね』と患者さんが話してくれる。この会話は、保険だけのクリニックには絶対に生まれない」

― 小林(看護師長)
PART 07 — MESSAGE

これから美容を始めるクリニックへ

― 編集部最後に、それぞれの立場から。まず関根さん、院長とスタッフの間に立つ事務長として、最も大事な役割は何だと思いますか。

関根さん
関根(事務長)

「翻訳」だと思っています。上の立場が語るとき、どうしても数字や経営の話は切り離せません。でも現場からすると「またお金の話か」となる。医療職は、そこに引っかかりを感じやすいんです。だから間に立って、同じ事実を「現場目線ではこういう良いことがある」と伝え方を変えて届ける。事実は一緒でも、視点を変えれば伝わり方が変わります。

人材については、スキルセットは正直、難しいものは要りません。学ぼうと思えば情報はいくらでもある。大事なのはマインドです。自分たちのやろうとしていることに共感できる――共感できなくても、決まったことは「一緒にやってみよう」と前向きに捉えられる人。そういう人が多ければ多いほど、うまくいきます。

いろんなロールを経験してきて思うのは、結局どこまで行っても「人」だということです。相手のやりたいことを、どれだけ自分ごととして捉えて、伴走できるか。頭は冷静に、でも心では全力でサポートする。それが運営側の仕事なんだと思います。

― 編集部これから美容を始めるクリニックの事務担当者へ、一番伝えたいことは。

関根さん
関根(事務長)

クリニックの形によって、合う・合わないは必ずあります。美容というと「全く違うものを入れるのか」と、アレルギーのように感じる方もいるかもしれない。でも、自分たちに合う形は、やっていくうちに見つかっていくものだと思うんです。何回かやってみて「しっくりこないな」と思うこともある。それでも、まずやってみる。そのとき、いきなり大きくやろうとしないで、簡単にできることから小さく始めれば、リスクはそんなに大きくありません。まずやってみて、自分たちの患者さんや地域の特色に合っているのか、実際にニーズがあるのかを確かめればいい。

「自分たちのスタンスはこうだから」に縛られすぎないことも大事です。法人の想いって、その診療科をやること自体ではないと思うんですよ。「患者さんに何かを提供する」という、もう一段上のレベルで考えたとき――そこから大きく外れていないのであれば、チャレンジしてみたらいいんじゃないかと思います。

いきなり大きくやろうとしない。小さく始めれば、リスクは大きくない。自分たちに合う形は、やっていくうちに見つかっていく

― 関根(事務長)

― 編集部小林さんは、「うちのスタッフに美容は無理」と思っている看護師長へ。

小林さん
小林(看護師長)

「美容は無理」と線引きしないでほしいんです。日々の医療に美容のアドバイスがひとつ加わるだけで、患者さんのQOLや満足度は上がります。敷居を高く構える必要は全くない。「カウンセリングして売上を上げなきゃ」と思うと苦しくなりますが、そこじゃないんです。まずは患者さんが気軽に相談できる雰囲気を作ってあげること。そこから始めればいい。

人は誰しも老化に直面します。予防医療のひとつとして捉えて、ぜひ始めてほしい。それと、立ち上げの最初の1ヶ月に絶対やるべきことを聞かれたら、私はSNSとポスターと答えます。発信しないと、何も始まらないので。

― 編集部住田さんは、数字を預かる立場から。

住田さん
住田(管理部長)

「税金と利益」の観点を、始める前に持っておいてほしいです。売上が上がるのはすごく良いこと。でもそれに利益が見合っているか。そして、事業の構成や売上の規模によっては、うちのように税負担が大きく変わるケースもあり得るということ。このあたりを顧問税理士さんと事前に確認しておくかどうかで、準備がまったく変わってきます。起こり得ることを知った上で始めれば、驚かずに済みますから。

― 編集部南多摩クリニックを、これからどんなクリニックにしていきたいですか。

住田さん
住田(管理部長)

まずは安定させること。余力が生まれないと、新しいことはできません。今あるものを守りながら、現状を打破していく――この2つを並行できるクリニックにしたい。地域にこのクリニックがある意義は何か、を軸に考えると、駅前ではない立地で、いまは高齢の患者さんが中心ですが、このあたりには若い方や学校も多い。予約制の導入などで、これまで来なかった層も呼び込んでいきたいですね。

関根さん
関根(事務長)

南多摩は、高齢の患者さんがすごく多い地域です。お一人おひとりに丁寧に向き合うのはもちろん大事ですが、いろんな年代の方が来て、来た方々の間に交流が生まれるクリニックって、すごく魅力的だと思うんですよね。だから敷居を広げるためにいろんなことにチャレンジして、どの年代の方も来やすい環境を作っていきたい。

スタッフに対する想いは、一貫しています。「やりたい」と思ってくれるなら、全力で支援してサポートする。みんなの「やりたい」という矢印がいろんな方向を向いて、それがうまく噛み合ったとき、組織は強くなると思っています。

経営目線で言えば、保険診療だけに頼るのは、今後を考えるとリスクがあります。収入の柱を複数持つのは、戦略として全然あり。保険と自費の比率が10対0から始まって、9対1、8対2と、少しずつ変化を出せるように取り組んでいきたいですね。

小林さん
小林(看護師長)

私は、もっと気軽に美容の患者さんが来てくれるクリニックにしたい。施術メニューも増やしたいです。ただ、いきなり機械に投資すると負担が大きいので、まずは今あるものでできることから患者さんを増やして、ニーズに合わせて提供を広げていく。今の状態に満足はしていません。もっとたくさんのメニューを、もっとたくさんの人に届けたい。

患者さんが「ここに来て、保険も診てもらえて、美容もできてよかったわ」と満足して帰ってくださる。スタッフ全員が同じ気持ちで美容を盛り上げていける。そういうクリニックを作っていくことが、これからの私の楽しみです。まだまだ働きますよ(笑)。

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クリニック名
医療法人社団 真清の会 南多摩クリニック
所在地
〒194-0037 東京都町田市木曽西3-20-6 メディカルモール町田 1F
診療内容
整形外科・内科・訪問診療/美容医療(導入拡大中)
関連施設
新千歳クリニック/レディアス美容クリニック恵比寿・福岡
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