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TOP 経営インタビュー ハイブリッド・クリニック経営論 #01 宮井保尚 理事長
SERIES|ハイブリッド・クリニック経営論 #01

保険診療の延長線上に、自費の収益をつくる。

4院を展開し、いまは2院を主軸に稼働。さらなる拡大を見据える整形外科医・宮井保尚が語る、「直美」とは対極の道で美容医療に踏み出した実像と、これから自費を考える保険クリニックへの現実解。

経営インタビュー 取材地:レディアス美容クリニック恵比寿 読了 約9分
インタビューに答える宮井保尚理事長

医療法人社団 真清の会 理事長・宮井保尚先生。整形外科の現場で20年を過ごし、保険診療を主軸としながら美容領域に拡張してきた。

宮井保尚理事長
宮井 保尚(みやい・やすなお)
医療法人社団 真清の会 理事長
2004年 久留米大学医学部医学科卒業。整形外科を専門とし、日本整形外科学会認定専門医・麻酔科標榜医。所属:日本整形外科学会/日本リハビリテーション学会/日本美容皮膚科学会。南多摩クリニック(町田)、新千歳クリニック、レディアス美容クリニック恵比寿・福岡を運営。

「美容に行く人間は、ろくな人間じゃない」。宮井保尚先生が医師になった頃、業界にはそんな空気が確かにあったという。整形外科の手術を専門に20年、保険診療の現場を歩いてきた医師が、いま保険クリニックと美容クリニックを束ねる経営者になっている。華々しい「直美(ちょくび)」の物語ではない。脱毛機の使い方も分からないところから、他院を徹底的にリサーチし、試行錯誤を重ねながら自費を立ち上げてきた4年間の話だ。これから美容外来を考える保険クリニックの院長にとって、これほど等身大の先行事例は珍しい。

PART 01 — NOW4院を回り、いま2院を主軸に

以前は4つの拠点を曜日で回られていたとうかがいました。最近「落ち着いた」と。

そうですね。少し前までは、月火が北海道(新千歳)、水木が東京(町田)、金土が福岡、日曜が恵比寿、というサイクルでずっと回っていました。4院を自分の体ひとつで回していた時期です。それが、北海道と福岡については信頼できる管理医師に任せられる体制が整って、いまは自分が主に町田と恵比寿の2院で稼働できるところまで落ち着いてきた。手を引いたわけではなく、任せられる人が育って、組織として回るようになった、ということなんです。

恵比寿のレディアスは、もともと美容を専門にしてきたクリニックを継承した拠点です。保険診療を主軸にやってきた自分にとっては、ここが美容へ本格的に踏み込む足がかりになりました。体制が回るようになったぶん、いまは次を見据えられる状態になってきている。いい継承案件があれば、これからもさらに広げていくつもりです。

PART 02 — ORIGIN整形外科医が、美容へ向かうまで

先生のキャリアは整形外科からですね。なぜ美容に向かったのでしょう。

2004年に久留米大学を出て、福岡で研修して、整形外科でずっと手術をやってきました。2011年頃に関東へ来て、そのまま整形外科で腕を磨いていたんですが、いつかは自分で院長をやりたいという気持ちが強くなってきて、院長職を探し始めたんです。2019年頃に北海道で雇われ院長をやったんですが、雇われだと自分のやりたいことはできないと感じて。それなら、お金をかけてでも自分でやろうと。

「美容をやりたい」という気持ちは、いつ頃からあったのですか。

正直に言うと、僕らの世代は美容に行くことへの偏見がすごく強かったんですよ。「美容に行く人間はろくな人間じゃない」という空気が、実際にあった。だから興味はあっても、なかなか踏み込めなかった。それが時代とともに変わって、美容がいろんな場所で活躍する場になっていくのを見て、やっぱり自分もやってみたいという気持ちが強くなっていきました。

きっかけは、わりと個人的なものなんです。自分自身、ニキビに長年悩んでいて、ニキビ跡を治したかった。脱毛もしたかった。「自分が受けたかった施術」が、美容に向かう出発点でした。

経営の側面では、何が決め手になりましたか。

30代の頃は体力もあって手術をガンガンやって、それで良かったんです。でも40になって体力が少しずつ落ちかけてきたのに、給料はそんなに上がらない。なぜかと言えば、保険医療の仕組みなんですよ。保険点数は決まった金額だから頑張っても上がらない。だったら勤務医でいるより独立して、自分で単価を上げられることをしないといけない。そう感じたのが2019年頃でした。

語る宮井理事長
「いまさら手術一本に戻る選択肢はない。ただ、現場で手を動かしたいという技術者の感覚は、今でも残っているんです」

PART 03 — SUCCESSIONすべて「継承」で広げてきた

4つの拠点は、いずれも継承だそうですね。

はい、全部継承です。新規で立ち上げたところは一つもない。2020年8月に町田の整形外科(南多摩クリニック)を継承したのが最初で、ある程度軌道に乗っていたので、2021年4月に北海道の新千歳クリニックも継承しました。美容をやりたくて探していたら、2024年に恵比寿の継承案件が出て購入。さらに福岡もやりたくて、2025年に福岡の案件が出た。それで今に至ります。

あえて継承を選ぶ理由は。

継承のいいところは、すでにお客さんの流れがあることです。その流れをスッと受けられる。ゼロから患者を集めるのとは、まったく違いますから。そこは大きいと思って継承を選んでいます。

これから美容に参入したい経営者には、どんな継承をすすめますか。

美容100%のクリニックを継承するのは、いまのご時世だと正直なかなか難しいと思っています。一番いいのは、保険診療をやっていて、そこから少し美容に拡大していくモデル。保険診療で来てくれている患者さんって、美容に関しては別のところに行っているわけですよ。それを自分たちで取り込めるという安心感がある。保険診療の継承からスタートして自費を足していくのは、十分ポテンシャルがあるし、やるべきだと思います。

PART 04 — REALITY立ち上げのリアル ― 脱毛機ひとつから

美容を始めた段階で、知識はどのくらいあったのですか。

まったくなかったですね。だから本当に脱毛から入りました。脱毛と言っても、どの機械を買えばいいのか、何回おきに来てもらえばいいのかも分からない。だから近くのクリニックに勉強しに行ったりして。最初にやったのは新千歳で、2022年頃です。ジェントルマックスプロを買いました。

買ったはいいけど、使い方もゼロからでした。業者さんに来てもらって勉強会を重ねながら、スタッフとともに少しずつ習得していった。料金設定も、外部に頼れる人がいなかったので、同じ機種を導入しているクリニックを片っ端から調べて、地域性も含めて「新千歳ならこのくらいの価格帯が妥当だろう」と自分たちで判断して設定していった。そうやって、やりながら覚えていった形です。

運営面で、環境的に苦労した部分はありましたか。

カード決済まわりは、思った以上に手間がかかりました。保険診療ってカードをあまり使わないですよね。でも脱毛は複数回コースになると10万円を超える決済も普通に発生する。現金でそのままお支払いいただく方はまずいない。カード決済の仕組みを整えるだけじゃなく、スタッフにも決済の流れを一から覚えてもらわないといけなかった。電子カルテは保険の自費部門がそのまま使えるタイプだったので助かりましたが、それ以外の周辺環境を整えるのに、想像より時間がかかりました。

PART 05 — ORGANIZATION変化を一緒に歩ける人と、組織を作る

設備面よりも、組織づくりに苦労したのでは。

それは本当にそうですね。経営者の頭の中が変わっても、組織はすぐにはついてこない。そのギャップが、しばらく続きます。保険診療のクリニックで長年キャリアを積んできたスタッフにとっては、自由診療というのは、自分の専門とは異なる領域への転換になりますから、戸惑いがあるのは当然のことです。それぞれが培ってきた経験と誇りがある。

保険と自費の両方に前向きに取り組める方、保険一本でスペシャリストとして動きたい方、自費に特化して成長したい方、それぞれに異なる意向があって当たり前です。ただ、同じ空間で方向性が異なると、チームとしての摩擦が生まれることもあった。クリニックの進む方向に共感してもらえる環境を作ることが、経営者として一番大切な仕事だと実感しました。結果として、考え方が合わずにお別れすることになったスタッフもいれば、一緒に変化を乗り越えてくれたスタッフもいる。それが現実です。

そこをどう乗り越えたのですか。

美容に興味を持ってくれているスタッフには、福利厚生として施術を受けられる特典をつけたんです。自分たちで体験することで、自然と知識も深まっていく。そうすると、自ら勉強して提案できるようになっていく。採用面でも、「こういう環境がある」と伝えることで、整形外科と美容の両方に意欲のある人材が集まるようになりました。ホームページに大きく投資しなくても、インスタグラムを見て応募してくれる方が増えてきた。クリニックの文化が伝わるようになってきたんだと思います。

「もしコンサルのような専門家がいたら、半年〜1年で変わっていたかもしれない。自分たちだけで手探りでやったから、安定するまでに2〜3年かかりました」

新千歳では、自費の売上が大きく伸びたとうかがいました。

事務長がそういうデータを出すのが好きで(笑)。初めてジェントルマックスを入れた時は本当に月3〜4万円くらいから始めたんです。それが徐々に浸透して月70万円くらいになって、今では月平均500万円規模まで伸びました。脱毛の機械は500万円以上して、リースで月々15〜20万円かかりますが、安定すれば月200万円くらい稼いでくれる。最初の1〜2ヶ月は赤字でも、その間にスタッフ教育を進めて、自分が関わらなくても回るシステムにしてしまえばいいんです。また、この地域ではまだ珍しい医療アートメイクも、専任の看護師が3名ほど在籍しています。人口10万人いかない地域ですが、まだまだ成長過程です。

PART 06 — ADVICEこれから美容を始める保険クリニックへ

保険診療の点数が、今年6月の改定でまた下がりました。

整形外科も下がりましたし、リハビリの点数も下がった。ダメージを受ける先生は実際にいます。自費はもう、取り入れるべきだと思いますよ。同じ整形外科でずっとやってきたドクターと食事に行くと、「自由診療ってどうなの?」とよく聞かれる。みんな興味はあるんです。ただ、一歩踏み出せない。

その「踏み出せない人」には、何から勧めますか。

まずは点滴くらいからでいいと思うんです。グルタチオン、白玉注射、にんにく注射。先行投資がほとんど要らないところから始める。それで少し軌道に乗って、「実は肌のことで悩んでいる」という患者さんが5人、10人と集まってきたら、そこで初めて機械に投資すればいい。順番が逆なんです。

保険をやりながら自費を入れる場合、最先端の高額な機械をいきなりバンバン入れる必要はまったくない。最初はピーリングのような消費財でいけるものからでいいんです。そこで肌感覚をつかんでいく。美容に精通している人ほど「ダーマペンなんてもう化石だよね」みたいな論調になりがちですが、そこに行くまでは段階を踏んでからでいい。目の前の患者さんが「肌をきれいにしたい」「毛穴を良くしたい」と求めている、まずそこに応えることからです。

EDITOR'S NOTE ― 関連サービス
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SHIFT MEDICAL「お試し美容外来」

宮井先生が「自分たちだけでやったから2〜3年かかった」と振り返るこの立ち上げ期間を、外部の手で短縮するのが、SHIFT MEDICALの提供する「お試し美容外来」です。クリニックの休診日のスペースと既存の患者リストを活かし、経験豊富な美容看護師が現地で技術指導を兼ねて施術を行います。オペレーションをスタッフに落とし込みながら、同時に外来を立ち上げられる仕組みです。

  • 初期導入費のかからないメニュー(ピーリング等の消費財)からスタート可能
  • 機械が必要な段階では選定もサポート
  • 既存の保険患者リストへのアプローチ設計まで一括で支援

本企画の取材後、このモデルについて宮井先生にも率直なご意見をうかがいました。

「全然ありだと思います。美容をやりたいけど踏み出せない人をターゲットにするのは、すごくいい。ニーズは確実にあります。ピーリングから入るのも理にかなっている。アプローチとして絶対にありですよ」

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PART 07 — FUTUREこれからのこと

今後の展望は。

都心部は、もう正直かなりの激戦区です。だから次に考えているのは、むしろ地方ですね。跡継ぎがいなくて困っている保険診療のクリニック、整形外科などを継承して、そこから美容なり訪問診療なりに広げていく。そういう案件があれば、どんどんやっていきたいと思っています。

最後に、同じように悩む保険クリニックの先生へ。

悩んでいるくらいなら、本当にできるところから1個ずつやってみるといい。僕も最初は脱毛のことすら何も分からなかった。それでもここまで来られた。プロに頼めば、その時間はもっと短縮できます。一歩を踏み出すことが、何より大事だと思います。

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取材ご協力

クリニック名
医療法人社団 真清の会 レディアス美容クリニック恵比寿
所在地
〒150-0011 東京都渋谷区東3-25-8 ACN恵比寿ビル7F
アクセス
JR・東京メトロ日比谷線 恵比寿駅から徒歩3分
診療時間
10:00〜19:00(休診日:木曜日)
関連施設
南多摩クリニック(町田)/新千歳クリニック/レディアス美容クリニック福岡
レディアス美容クリニック恵比寿 受付
レディアス美容クリニック恵比寿 受付。物販棚にはピーリング製剤やスキンケアが並ぶ。
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