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医療の選択肢を広げる、新しい診療 | Vol.2 フェムケア × 膣内EMS・RF機器

「膣のケア」を、もっと身近に自身の産後の悩みから始まった、フェムケア機器開発の8年

産後の尿漏れや膣のゆるみといった悩みを、もっと身近な場所で相談できないか。京都の美容機器メーカー、株式会社ミヤコケミカルの代表・阿部あい子氏が開発に踏み出した背景には、自身の出産経験があった。8年をかけて形にしたのが、フェムケア美容機器「Vwand+1℃(膣ポーラ)」だ。使い心地や衛生面を追求した開発の歩みから、導入後の教育、有効性・安全性の検証に残る課題まで、美容看護師の相良萌が話を聞いた。

機器のハンドピースを手に説明する株式会社ミヤコケミカル 代表取締役 阿部あい子氏
機器のハンドピースを手に説明する阿部あい子氏。(写真提供/株式会社ミヤコケミカル)

本記事は、2026年10月27日のオンライン取材をもとに構成し、発言は趣旨を保って読みやすく編集しています。機器の仕様や導入状況、利用者の声は、開発元である同社の説明に基づきます。同社は本製品を医療機器ではない美容機器として案内しており、本記事は治療効果や安全性を示すものではありません。取材先から金銭の提供は受けていません。なお、ドカリーを運営する株式会社シフトメディカルは、取材時点で同社と販売面での連携(代理店契約)について協議しています。契約に至った場合、当社は同製品の販売により収益を得る立場になるため、記事内の表記を更新します。

この機器について(同社の公式サイトと取材による)
名称
Vwand+1℃(ブイワンド プラスワンド。通称「膣ポーラ」)。サロン向けの「Fem Polar Pro」と、クリニック向けの「Fem Polar Clinic」の2機種
区分
同社が医療機器ではない美容機器として案内している製品。機器の区分や使用・説明の範囲は、導入時に確認が必要
機能
EMS(電気的筋肉刺激)・RF(高周波)・EP(エレクトロポレーション)の3機能。膣内に挿入する使い捨てアタッチメント(直径約2cm・長さ約9.5cm、同社による)を用いる。温熱と電気刺激を組み合わせた設計と同社は説明している
提供の形
利用者が自分で挿入し、スタッフが案内する「セルフ」形式。クリニック向け機種は、医師の関与(提携を含む)を条件に提供される(同社による)
費用
使い捨てアタッチメントは1回3,000円(税別。製品ページでは税込3,300円として公表)。機器本体は買い取りではなく月額レンタル(貸与)の形をとっている。利用者向けの料金は各施設が設定する(いずれも同社グループの製品ページの公表情報と取材による)
特許
特許第7691592号「施術器および施術方法」(特許権者・発明者:阿部あい子氏。出願 2021年9月8日、登録 2025年6月4日。同社はこの技術を「3DABE WAVE」として公表している)。高周波と低周波の同時出力に関する技術は、特許第7812984号「施術器」(発明者:阿部あい子氏・永井亘道氏。出願 2023年7月14日、登録 2026年2月12日。公表された特許情報による)として登録されている。特許の取得と、本製品の有効性・安全性の検証は別の事項となる
出典:株式会社ミヤコケミカル公式サイト(2026年10月27日閲覧)
https://miyako-chemical.jp/(製品案内:2026年9月1日/特許取得について:2025年11月7日)
フェムケア美容機器 Vwand+1℃ Fem Polar Clinic の本体
クリニック向け機種「Vwand+1℃ Fem Polar Clinic」の本体。(写真提供/株式会社ミヤコケミカル)
開発のきっかけ

自分が悩んだからこそ、身近な選択肢をつくりたい

京都市右京区に本社を置くミヤコケミカルは、化粧品や美容機器の開発・製造を手がけるOEMメーカーだ。阿部氏が膣内のケアに関心を持ったのは約10年前。海外の取り組みに触れたことに加え、自身の産後の悩みが、開発へと踏み出すきっかけになった。

相良

膣内のフェムケアに着目したきっかけを教えてください。

阿部

中国では10年ほど前から膣内のケアが広がり、家庭用の機器も見かけるようになっていました。韓国でも早くから取り組まれていて、それに比べると、日本ではまだ身近なものになっていないと感じていたんです。

もう一つは、私自身の経験です。8年前に出産したとき、尿漏れや膣のゆるみにとても悩みました。日本にもケアの選択肢はありましたが、気軽に受けられるとは感じられなかったんです。もっと身近なものにできないか。そう思ったことが、開発のきっかけになりました。

相良

海外の取り組みと、ご自身の経験の両方が出発点だったのですね。

阿部

産後のケアをどう支えるか、という文化の違いも感じます。中国には、産後のお母さんを健康面や美容面から支える専門施設があります。私が見てきた中では、そうした施設に加え、病院やサロンにも膣内ケアの場が広がっていきました。

開発の8年

使う人の感覚を確かめながら、設計を重ねる

相良

開発には8年かかったと伺いました。特に時間をかけたのは、どのような点ですか。

阿部

美容機器の技術はもともとありましたが、まずは海外の機器を、業務用も含めて自分で試すところから始めました。温度や電気刺激が気になるものもあれば、アタッチメントが大きいと感じるものもあって、使い心地をもっと工夫できるのではないかと思ったんです。

そこで、電気刺激の不快感を抑えながら筋肉を動かすことを目指し、EMSのプログラムと基板の設計から始めました。もう一つ取り組んだのが、高周波と低周波を同時に出す技術です。「温めながら筋肉を動かせたら」という発想でした。

特許を取ること自体が目的ではなく、心地よく、気軽に使ってもらえるものにしたかったんです。アタッチメントは直径約2cmにし、手前と奥で刺激を分けられるように設計しました。開発中は、私自身を含めて200人近い方に試していただき、サイズや形、刺激の与え方を何度も調整しています。

特許第7691592号の特許証を手にする阿部あい子氏
特許第7691592号「施術器および施術方法」の特許証を手にする阿部氏。(写真提供/株式会社ミヤコケミカル)

長年培ってきた美容機器の技術も、そのまま転用できたわけではない。膣内での使用に合わせたプログラムの調整だけで、数年を費やしたという。

衛生面を考え、アタッチメントは使い捨てに

阿部

もう一つ時間がかかったのが、アタッチメントです。膣内に入れるものなので、最初は衛生面を考えてカバーをかぶせる方法を検討しました。ところが、それではうまく通電しない。伸縮性のあるシリコンなども試し、最終的にアタッチメントそのものを使い捨てにする設計にたどり着きました。

設計は私たちで行いましたが、使い捨てにできる価格で製造を引き受けてくれる会社が、国内では見つかりませんでした。中国の部品メーカーに相談して、ようやく形になったんです。アタッチメントの製造に2年。素材の検討から数えると、4年ほどかかっています。

相良

展示会で実物に触れましたが、使い捨てという点や、凹凸の少ない形状が印象に残りました。

阿部

色も、やさしい印象になるように選んでいます。アタッチメントには温度センサーとチップを組み込み、温度の上昇を監視するとともに、一度使ったものでは再び起動できない仕組みにしました。

海外で製造していますが、クラウドを使って1台ずつ管理しています。温度センサーの動作や通電状態が基準を満たしているかを日本側で確認し、検査に合格したものを出荷する流れです。

安全性と、使用に適さない人

使用にあたって、医師への確認が必要な場合も

どのような人が使えるのか、注意が必要なのはどのような場合か。阿部氏は、導入施設に伝えている基準と、医師の判断を求めている場面を説明した。

相良

使用に適さない方、注意が必要な方はいらっしゃいますか。

阿部

たとえば、子宮に関わる病気で治療を受けている方です。私は医師ではないので、使用してよいかを判断することはできません。治療中の病気がある場合には、この機器を使いたいことを主治医に伝え、確認していただくようお願いしています。

妊娠中の方には使用をお断りしています。産後の方についても、医師に確認していただくようにしています。

利用者自身が扱う「セルフ形式」という提供方法

同社は当初、医療機器としての承認取得も検討したという。阿部氏によれば、行政への相談を経て、美容機器として提供する形になった。ただし、相談の内容や回答を示す資料は、編集部では確認できていない。

相良

現在は、クリニックとサロンの両方に提供されているのですね。

阿部

はい。当初は、医療機器でなければクリニックの先生方に受け入れてもらえないのではないかと思っていました。ところが、婦人科の先生から「それなら取り組みやすい」という声をいただくこともありました。

利用者がご自身で挿入し、スタッフが準備や案内をするセルフ形式です。そうした運用に関心を持ってくださる先生もいらっしゃいます。

編集部注:同社の「美容機器」という説明だけで、院内での提供方法やスタッフの役割が決まるわけではありません。導入を検討する場合は、機器の仕様と使用方法を踏まえ、医療行為への該当性や案内できる範囲、広告表現などを、関係する行政窓口や専門家に確認する必要があります。

利用者の声を、どう検証につなげていくか

導入が進む一方で、医療機関からは実績や効果をどう捉えればよいか、という質問も寄せられる。利用者の声と、機器としての検証には、どのような隔たりがあるのだろうか。

相良

導入を考えている先生から、よく質問されることは何でしょうか。

阿部

やはり実績と効果についてです。美容機器ですから、「尿漏れが治る」とは説明していません。変化を感じたという声があっても、どれくらいの方が、どのような変化を感じ、それがどのくらい続くのかを示す必要があります。乾燥の悩みについても同じですが、いまは十分にお答えできるデータがありません。

この機器そのものの安全性や効果に関するデータは、これから蓄積していかなければなりません。導入してくださった先生方にも、ご協力いただけないかと相談しているところです。

使用前後の状態や、やけど・炎症などの有無を、どのように記録していくか。同社では、検証の方法や体制づくりを検討している段階だ。

利用者の悩みと、クリニックの役割

「今まで誰にも言ったことがない」という声

同社によれば、2026年5月にリリースし、9月から導入が本格化。取材時点で約25施設が導入しており、多くはサロンだという。阿部氏は導入先を訪れ、利用者の声に耳を傾けてきた。

相良

利用される方からは、どのような相談が寄せられていますか。

阿部

美容への関心から来られる方もいれば、尿漏れや膣の乾燥などを気にしている方もいます。美容機器なので「治る」とは説明していませんが、そうした相談は多く寄せられます。

想像以上に多かったのが、性に関する悩みです。あるサロンの体験会で100人ほどにお話を聞いたところ、7割ほどの方がそうした悩みを抱えていました。相談の内容はさまざまですが、パートナーのためというより、ご自身のこととして悩んでいる方が多いと感じました。

相良

性に関することは、婦人科の診察室でも自分からは切り出しにくいですよね。悩みがあっても、誰にも話せずにいる方がいらっしゃるのだと感じます。

阿部

パートナーとの関係に影響している、と話す方もいます。「遠慮なくお話しください」とお伝えすると、「実は、今まで誰にも言ったことがないのですが」と話し始める方がいらっしゃるんです。

クリニックが、そうした悩みを安心して話せる場所になっていくといいなと思います。「こんなことを相談してもいいのか」「どこに話せばいいのか」と迷っている方も多い。相談できる場所があると知ってもらうことが、まず大切なのだと感じています。

導入の形と、費用の考え方

操作だけでなく、相談への向き合い方も学ぶ

導入施設向けの教育は、同社とは別に設けた一般社団法人が担う。阿部氏によれば、スタッフは導入研修を受けたうえで、利用者への案内と説明を行う。

相良

スタッフが利用者を案内するために、どのような研修や支援を用意していますか。

阿部

導入研修は4時間で、最初は私が直接行います。扱い方は動画でも見返せるようにしていて、研修後には現地で運用の流れを確認します。それに加えて、デリケートゾーンのケアやホームケア、カウンセリングなどを学ぶ研修を、月ごとに計6回用意しています。

カウンセリングシートや使用上の注意、利用後の案内、メニュー表、リーフレットなども、協会で用意しています。施設側が一から資料を作る負担を減らし、日々の案内に使っていただけるようにしています。

導入施設の負担を抑え、利用しやすい料金へ

身近に利用できる場を増やすには、施設側が導入しやすい仕組みも必要になる。同社が機器を貸与で提供する背景には、導入時の負担を抑え、その分を利用しやすい料金につなげてほしいという考えがある。

相良

導入施設や利用する方の負担については、どのように考えていますか。

阿部

高額な機器を購入しなくても始められるように、貸与という形にしました。スタッフが準備や案内をするセルフ形式も、現場の負担を抑えるための工夫です。導入施設には、その分、利用する方にとっても通いやすい料金にしてほしいとお伝えしています。

悩みがあっても、相談先やケアの選択肢を知らない方は多いと感じます。今後3〜5年で、サロンとクリニックを合わせて1,000か所、主要な駅に2〜3か所あるような状態を目指しています。継続して利用していただくことを考えると、身近な場所にあることが大切だと思うんです。

クリニック向け機種は、医師が関わる体制を条件に

同社は、サロン向けの「Fem Polar Pro」と、クリニック向けの「Fem Polar Clinic」を展開している。クリニック向けの機種は、展示会で寄せられた医師の声を受けて用意したという。

相良

「Pro」と「Clinic」には、どのような違いがありますか。

阿部

クリニック向けは出力を高めた仕様で、提携を含め、医師が関わっていることを提供の条件にしています。何かあったときに対応できる体制があるかどうかを重視しているからです。

医師が常駐する医療法人への導入は取材時点では1院で、2027年1月にはもう1院で始まる予定です。

取材を終えて——「相談してもいい」と思える場所に(相良 萌)

産婦人科を含む病棟で働いてきた私にとって、今回、特に印象に残ったのは、「今まで誰にも言ったことがない」と話し始める方がいるということでした。診察室に来ていても、気になっていることをすべて話せるとは限りません。患者さんが「ここなら相談してもいい」と思えるきっかけを、どうつくるか。機器を導入するかどうかとともに、クリニックで考えていきたい課題だと感じました。

その一方で、相談が多いことと、この機器の有効性・安全性が確かめられていることは別です。導入を検討する際には、分かっていることと、まだ確認できていないことを整理して伝える必要があります。悩みを受け止める姿勢と、根拠を確かめる姿勢。その両方を大切にしながら、フェムケアに取り組む現場に目を向けていきたいと思います。

フェムケアに限らず、自費メニューの導入について相談したい方は、ドカリーのLINEからお気軽にどうぞ(無料・医療従事者向け)。
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クリニックで導入を検討するときに、確認しておきたいこと(編集部まとめ)
  1. 製品の位置づけと根拠資料。仕様書、取扱説明書、医療機器への該当性に関する説明資料を取り寄せ、有効性・安全性について何が確認されているかを整理する
  2. 院内での提供方法。医療行為への該当性、スタッフが担う範囲、会計上の扱いを確認する。医療法人では業務範囲との関係も整理する
  3. 使用対象と医師への相談体制。メーカーの使用基準を確認し、医師が使用可否を判断する場面や、異常があった場合の対応を定める
  4. 利用者への説明。確認されていない効果を約束せず、製品の位置づけ、検証状況、費用を説明する。相談内容に応じて、診療につなぐ流れも考える
  5. 研修・契約・費用。研修内容、貸与条件、消耗品や保守の費用を文書で確認し、利用者向け料金を検討する
  6. 広告と日々の記録。ウェブサイトや院内での案内は、媒体・内容に応じて適用される規制を確認する。使用状況や相談内容、トラブルを記録する方法も決めておく
※ 取材内容をもとに、導入を検討する際の論点を整理しています。個別の法令上の判断は、関係する行政窓口や専門家にご確認ください。参考:厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」。
COMPANY
株式会社ミヤコケミカル

〒615-0022 京都府京都市右京区西院平町19番地
設立:1998年3月/資本金:1,000万円(同社公式サイトによる)
事業内容:化粧品(販売用・業務用)および美容機器(家庭用・業務用)の開発・製造、OEM化粧品・OEM美容機器の開発・製造
※ 本製品の販売・レンタルの窓口は、同じ代表者が運営する株式会社MIYAKO(同一住所)。製品ページ:https://miyako-v.jp/
https://miyako-chemical.jp/

本ページは医療従事者向けの情報提供を目的としています。特定の機器・サービスの推奨や、効果効能の保証を行うものではありません。本記事で取り上げた機器は、同社が医療機器ではない美容機器として案内している製品であり、記事中の利用者の声は、同社の説明にもとづくもので、効果を示すものではありません。機器の仕様や提供条件は、同社の公式情報でご確認ください。
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